老眼治療

多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズ(老視矯正眼内レンズ)は、目の中にある水晶体を取り除き、代わりに挿入する眼内レンズです。光の性質(屈折や回折)を利用して近視・遠視・乱視と老眼が同時に矯正可能で、遠く・中間・近くなどの2〜5か所に焦点が合うように設計されています。また、近年次々と新しいレンズが発売されているEDOF(Extended Depth of Focus) と呼ばれる多焦点眼内レンズは、焦点深度を深くするという構造で、他の多焦点眼内レンズより遠くから中間の距離(パソコンぐらいまで)にかけて自然な見え方になると言われています。焦点の合う位置・数はそれぞれの多焦点眼内レンズによって異なり、現在取り扱っている20種類ほどの多焦点眼内レンズの中から、患者様の環境やご希望の見え方をお伺いした上で医師が最適なレンズを選択し、手術を行います。

近くの見え方の目安として、40cmぐらいの距離で新聞やメニュー程度の大きさの文字が読めるように設計されており、それ以上小さい文字や物などを見る際には、老眼鏡が必要になります。また、多焦点眼内レンズは、夜間の街灯や車のライトなどがギラついて見えたりまぶしく感じるハロ・グレアを発症することが多いのが特徴ですが、やがて眩しさに慣れて日常生活に支障がない方がほとんどです。(程度には個人差や多焦点眼内レンズの種類によって差があります)
眼内レンズは経年による劣化がない材質でできており、交換やメンテナンスの必要はありません。

多焦点眼内レンズのメリットとデメリット

メリット

  • 遠くも近くもある程度メガネなしで見える。
  • 水晶体を摘出するため、今後白内障になることがない。

デメリット

  • 夜間や暗い場所で、街灯や車のライトなどがまぶしかったりにじんで見える(通常は日常生活に影響しない程度)。
  • 近くは40cmぐらいの距離でものが見やすいように設計されており、それ以上近づけたり遠ざけて見ると見えにくくなる。
  • 薄暗い場所では、文字などが見えにくい場合がある。
  • 辞書などの小さい文字を見たり、手芸など細かい作業時には老眼鏡が必要になる。
  • 目の中に入ってくる光を分けて焦点を増やしているため、コントラスト感度が少し下がる
  • 視力が安定して自然な見え方になるまで3〜6ヶ月かかる場合がある。

多焦点眼内レンズ挿入手術の方法

手術方法は白内障の手術方法と同じで、手術時間は片眼で約30分です。当日の所要時間は、手術前の準備、手術後の休憩時間を含めると、約2時間半かかります。手術後は眼帯を数日間装用するため、両眼とも手術を受けられる場合でも1週間ほど間隔をあけて片眼ずつ手術を行います。

手術方法1

手術前に、抗生物質と瞳孔を大きく開く目薬を点眼します。点眼終了後、レーザー用のベッドに横たわります。

手術方法2

局所麻酔後、眼球表面にサクションリング(目を固定する器具)を取り付けます。


手術方法3

フェムトセカンドレーザーで、水晶体を覆っている嚢(のう)という膜の前面(前嚢)の切開、水晶体の分割、角膜の切開を行います。

手術方法4

手術用のベッドに移動します。レーザーで分割した水晶体を全て吸引します。



手術方法5

眼内レンズを目の中に挿入し、嚢(後嚢)の中へ留置します。

手術方法6

最後に大きな眼帯を付けて終了です。回復室で10分ほど休憩後、帰宅可能になります。

当院で使用するフェムトセカンドレーザーは、アメリカのAMO社のカタリスです。目に優しい接触面、患者様に合わせたレーザー照射設定を作成可能にする精密な断層解析、誤差がほとんど出ない正確なレーザー照射などが特徴です。前嚢を真円状に切開できるので、眼内レンズの位置ズレが発生しにくくなるメリットがあります。カタリスカタリス2

手術後の度数誤差を減らすために

眼内レンズの度数を決めるために、角膜のカーブや目の長さ(眼軸)等の数値が必要になります。手術前に2回検査を行い、データの安定性を確認してからレンズの度数を決定しオーダーしていますが、手術後に度数誤差が出てしまうことがあります。多焦点眼内レンズの持っている性能を最大限に引き出すには、度数誤差を抑え、適切な位置にレンズを固定することが望ましいとされています。そこでみなとみらいアイクリニックでは、手術中にリアルタイムで目の度数を測定できる、アルコン社製 "ORA™術中波面収差解析装置" を2016年5月より導入しました。眼内レンズの挿入前と挿入後にそれぞれ測定し、手術前の検査で決定した眼内レンズの度数が実際に目に合っているか確認しています。必要に応じて度数をその場で変更できるため、手術後の度数誤差を最小限に抑えられる可能性があります。過去にレーシックなどのレーザー角膜屈折矯正手術を受けられている場合は度数誤差が生じやすいため、特に有効です。

また、乱視用の眼内レンズは目の中で角度が1度回旋するごとに乱視矯正効果が3.3%下がると言われており、正しい位置に多焦点眼内レンズを固定することはとても重要なため、みなとみらいアイクリニックではアルコン社製VERIONイメージガイドシステムを導入しています。VERIONイメージガイドシステムには術前検査で測定した角膜屈折値や強結膜血管、虹彩、輪部の情報を元にしたトラッキング機能が備わっており、手術中に目が動いた場合でも1度単位の正確さで「乱視用多焦点眼内レンズを固定すべき位置」を医師が使用する顕微鏡下に表示します。このガイド位置を確認しながら乱視用多焦点眼内レンズの固定をするので、より正確な乱視矯正が可能になっています。

ora&verionora&verion2

白内障の手術後に度数誤差分(近視・遠視・乱視)をレーシックで矯正することをタッチアップと言います。上記のような最先端システムを使用していても度数誤差を生じる可能性はあり、手術後3か月ほど経過して目の状態が安定した後も見えにくさを感じる場合には、タッチアップを無料で行います。(手術後半年以内に1回限り、レーシックが適応になる場合のみ)

みなとみらいアイクリニックでは、多焦点眼内レンズ挿入手術後の度数誤差を限りなく抑え、多焦点眼内レンズの効果を最大限に発揮できるように努めています。

目の手術は怖いと感じている方へ

笑気ガス麻酔みなとみらいアイクリニックでは、手術時に点眼麻酔の他に低濃度笑気ガス麻酔を併用しています。低濃度笑気ガス麻酔は、歯科治療や無痛分娩などにも用いられている、軽い鎮静・鎮痛・睡眠作用がある安全性の高い麻酔です。手術中にマスクから笑気ガス麻酔を吸入すると数分で心拍数や血圧・呼吸など全身状態が安定し、ぼんやりと体がふわふわするようなリラックスした状態で手術を受けていただくことができます。低濃度笑気ガス麻酔は無料でご利用いただけます。
笑気ガスは体内で分解されず、吸入をやめるとすぐにそのまま排出されるので、数分で麻酔の影響はなくなります。呼吸器系、肝臓、腎臓、代謝系などに負担がかからないものですが、妊娠初期の方、鼻閉塞のある方、過呼吸発作の既往のある方、気胸の方、ビタミンB12欠乏症の方などには適していません。詳しくは医師にご相談ください。非常にまれに、吐き気、四肢の脱力などの症状を感じる場合があります。


多焦点眼内レンズ挿入手術前後のスケジュール

・手術前の検査
初回の適応検査、再検査、合計2回の検査が必要です。

・手術後の検査
手術翌日、1週間、1か月、3か月、6か月、1年、その後毎年1年に1回検査があります。

コンタクトレンズを装用中の方へ

適応検査前にコンタクトレンズの装用を中止する必要はありませんが、再検査前と手術前に下記のような装用中止期間があります。乱視用ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズをご使用中で、早めの手術をお考えの方は、適応検査前から装用中止していただくことをお勧め致します。

1.適応検査・コンサルテーション (所要時間 2時間〜2時間半)

担当のスタッフが目のさまざまな検査を行い、その結果を元に多焦点眼内レンズ挿入手術の手順・メリット・デメリット・手術前後の注意事項など詳しいコンサルテーションを行います。最後に眼底検査*を含めた医師の診察があります。ご質問やご不安なことがありましたら、お気軽にお申し出ください。
*瞳孔を開く検査のため、検査後3〜4時間は運転は控えてください

2.再検査の予約

適応検査終了時か後日お電話にて、再検査の予約を承ります。

3.再検査 (所要時間 約1時間半)

多焦点眼内レンズの種類や度数を決めるための重要な検査です。採血も行います。
事前にお渡ししているアンケートをお持ちください。
この検査の前に、コンタクトレンズの装用中止期間があります。

  • ソフトコンタクトレンズ … 最終検査の3日以上前から
  • 乱視用ソフトコンタクトレンズ … 最終検査の1週間以上前から
  • ハードコンタクトレンズ … 最終検査の4週間以上前から

4.多焦点眼内レンズのオーダー

予約金のご入金確認後に、レンズをメーカーより取り寄せます。届くまでに数週間~1か月ぐらいかかります。(在庫がない場合や乱視用は3か月以上かかる場合もあります)

5.手術の予約

多焦点眼内レンズの入荷後に手術の予約が可能になります。入荷次第ご連絡致します。

6.手術 (所要時間 約2時間半)

手術日は毎週金曜日です(不定期で火曜または土曜に振替あり)。
当日の来院時間は、手術日の前の週の土曜日ごろにお知らせします(時間指定不可)。
手術中に度数測定を行うため、手術の前にコンタクトレンズの装用中止期間があります。

  • ソフトコンタクトレンズ … 手術日の3日以上前から
  • 乱視用ソフトコンタクトレンズ … 手術日の1週間以上前から
  • ハードコンタクトレンズ … 手術日の4週間以上前から

7.定期検査

翌日検査

1週間検査・手術
手術した眼の1週間検査ともう片眼の手術を行います。
(*片眼のみ手術の場合は、次は1か月検診へ)

翌日検査

1週間検査

1か月検査
眼底検査を行いますので、検査後の運転は控えてください。

3か月検査

6か月検査

1年検査
眼底検査を行います。検査後の運転は控えてください。

年検査
1年に1回検査があります。
眼底検査を行います。検査後の運転は控えてください。


費用 *すべて税込表示です

適応検査・コンサルテーション、再検査
無料*

* 他院でレーシック・フェイキックIOL・円錐角膜治療の手術を受けられている方は、初回の検査費用として¥10,000かかります。

手術後の定期検査
¥1,200〜¥3,000*

* お薬が追加になった場合は別途かかります。また、他院で手術を受けられ、当院での定期検査をご希望の方は、医療機関からの紹介状がない場合は、初回の検査費用として¥20,000かかります。

セカンドオピニオン
¥50,000*

* お薬が追加になった場合は別途かかります。

多焦点眼内レンズ挿入手術 *どのレンズでも費用は一律です
両眼 ¥1,640,000 片眼 ¥820,000