目に入る光の成分には低次収差(近視・遠視・乱視の成分)と、指紋と同じようにすべての方で異なる高次収差があります。高次収差とは、光が目の表面の角膜から水晶体を通過して網膜に届くまでの間に、それぞれの目の形状によって発生する微細な光のゆがみです。同じ“視力” でも人によって “見え方” が異なるのは高次収差の違いによるもので、高次収差が少ない方はクリアに見え、高次収差が大きい方は物や字の判別はできますが、すっきり見えません。この高次収差を矯正することができれば、その方にとって最も快適な “見え方” になると言われています。
レーシックには、スタンダードタイプのレーシックと、オーダーメイドタイプのカスタムレーシックの2種類があります。スタンダードタイプのレーシックであるイントラレーシック(IntraLASIK)は、矯正度数によってレーザーの照射量は変わりますが、一定のパターンでレーザーを照射するいわゆる既製品のレーシックです。メガネ・コンタクトレンズと同様に、矯正できるのは低次収差(近視・遠視・乱視の成分)のみです。
それに対してカスタムレーシックは、一つ一つの目ごとにオーダーメイドのレーザー照射プログラムを作成し、より精密に近視・遠視・乱視を矯正するレーシックです。カスタムレーシックにもいくつか種類がありますが、みなとみらいアイクリニックではアイレーシック(iLASIK) を導入しています。アイレーシック(iLASIK)は、低次収差(近視・遠視・乱視の成分)だけでなはく高次収差も同時に矯正することができます。
アイレーシック(iLASIK)はその安全性と見え方の質の高さが研究によって証明されており、いままでレーシックを受けることが認められていなかったパイロットや宇宙飛行士も受けることができるレーシックです。2006年12月に米国国防省が戦闘機のパイロットに、2007年9月に航空宇宙局(NASA)が宇宙飛行士に、カナダが2009年2月に戦闘機パイロットに承認しています。
iDESIGNアドバンストウェイブスキャン(Refractive Studio)には、高次収差を測定するために天体望遠鏡の開発技術である” Wavefront テクノロジー” を応用した技術、WaveFrontシステムが内蔵されています。瞳孔内の直径7mmの範囲に最大1,257個の測定ポイントを設置し、精密に低次収差(近視・遠視・乱視)と高次収差(微細な光のゆがみ)を測定します。
測定したデータは、独自のフーリエ解析という他の検査機器で使われているゼルニケ解析より収差の解析精度がはるかに高い方法で解析を行い、その後エキシマレーザーシステムにデータを移してレーザー照射プログラムを作成します。その他、検査中と手術中の姿勢や明るさの違いによる目の状況変化がレーザー照射に影響しないように補正する、虹彩紋理認識システムIR(IrisRegistration)を備えています。
2019年5月に導入した最新バージョンのこのiDESIGNには新たに角膜形状解析マップが追加され、乱視の矯正精度が向上しています。
正確に目標通りの矯正を行うためには、レーザーの照射位置や角度は非常に重要ですが、レーザープログラムの元になるiDESIGNアドバンストウェイブスキャン(Refractive Studio)の測定時と手術中では姿勢や照明の明るさが異なるため、眼球の位置や瞳孔の中心が微妙に変化します。アイレーシック(iLASIK)は細かなゆがみも矯正するようにプログラムされていますが、これらの環境の違いによってレーザーの照射位置がずれると、逆に手術後に高次収差が増加してしまうため、虹彩紋理認識システムIR(以下IR)という機能を使用しています。
IRは、iDESIGNの測定時に一つ一つの目で異なる虹彩の模様の特徴を読み取り、それを元に瞳孔の中心位置も把握し、手術中にエキシマレーザーシステムが読み取った虹彩のデータと照合して眼球の位置ずれを感知、補正を行う機能です。
IRは、高次収差も矯正する最高精度のアイレーシックを行うにはなくてはならない大切なものです。検査時の測定中心とレーザー照射時の照射中心を一致させるこの技術は他社のレーザーシステムには備わっていません。
iFSアドバンストフェムトセカンドレーザーはフラップの直径、深度、端部角度、形状などを自由に設定することでき、コンピューター制御によるミクロン単位の数千個のレーザーパルスを並列させて角膜を切開し、理想的な形状のフラップを安全に作成します。切断面はなめらかで、フラップ作成における高次収差の増加も最小限に抑えます。
このレーザーは、角膜内リング挿入手術や角膜移植手術用の角膜切開プログラムも備えています。
STAR S4 IR エキシマレーザーは、生体組織に熱変性(やけど)をほとんど起こさずに正確に切開や切除ができる、特殊な高エネルギーのレーザーです。角膜の実質部分を削り、角膜前面のカーブを変化させて近視・遠視・乱視を矯正します。
角膜の切除量を抑えかつレーザー照射時間を最短にするために、iDESIGNアドバンストウェイブスキャン(Refractive Studio)で得られたデータを活用し、矯正エリア内の角膜の形状や高次収差の量によって照射径の大きさを0.65mm〜6.5mmの間で最適に変化させながらレーザーの照射をしています。さらに、レーザーの照射速度を6-20Hzの間で変化させながら照射することで、角膜の温度を一定に保ち、角膜への負担を最小限に抑えています。
また、自動センタリング機能の3Dアクティブトラック(位置合わせ技術)が備わっており、レーザー照射中の目の動きを立体的に補足し、三次元追尾しながら正確にレーザーを照射します。もし目が大きく動いた場合は、自動的に照射を停止するセーフティ機能が働くので、レーザー照射中にもし目が動いてしまったら、と心配な方にも安心です。
レーシックは、角膜の中央部分にレーザーを照射して人工的にその部分の形状を扁平化または突出化させることで、近視・遠視・乱視を矯正します。そのため、レーザーを照射した部分と照射していない部分とでは形状の違いによって光の入り方に差が出ることになります(高次収差の増加)。特に夜間や暗い部屋で瞳孔が大きく開いた時にその差を顕著に感じるようになり、下図(2)のように、光がにじんで見えるハロや、ギラついてまぶしく見えるグレアが発生します。
レーザーの照射径が大きいほど角膜形状の変化がゆるやかになり、ハロやグレアの増加を軽減する効果があります。スタンダードタイプのレーシックのレーザー照射径は一般的に6mmなのに対し、アイレーシックのレーザー照射径は8mmと僅かに大きいため、ハロ・グレアの程度はアイレーシックの方が弱くなることが予想されます。
2000年1月、厚生労働省はVISX STAR レーザーシステムに対し、屈折矯正手術目的での使用を承認しました。さらにカスタムレーシックも2003年5月23日、世界で最も基準が厳しいといわれる FDA:米国食品医薬品局(日本の厚生労働省に該当) の認可を得ており、安全性と効果について確率された手術方法です。